「ウェルカム!マンション」第8話と第9話の間の紫堂視点の小話です。
俺は昨日、初めて悠真と寝た。
鈍感な悠真は、俺の気持ちなんて全く気付かなかったらしい。
好きだと告げた時に言ったのが「嘘ぉ!」なんて…いくらなんでもそりゃあないだろう。
俺は本当に好きな奴に対しては素直になれなくて、ついいじめてしまうのだ。
いわゆる好きの裏返し、というやつだ。
それで俺のことが気になって、そのうち悠真の心の中が俺でいっぱいになればいいと思っていた。
どうせガキだよ、なんとでも言え。
それにしたって気付いてくれたっていいのに。
意地悪してキスした時だって、本気だったんだよ。
まぁまさか19歳でキスもまだとは思わなかったけど。
さり気なくライブのリハに誘った時も、あっさり断りやがってよ…あの時俺がどんだけドキドキしてたかわかんねぇだろ。
そんなわけで、昨日は思い切り可愛がってやった。
もちろん誰かと身体を繋げる、なんてことも悠真は初めてで、最初は嫌がっていたけれど、半ば強引にそっちの方向に持って行った。
今までだって同じ布団で寝てて、何度犯そうと思ったかはわからないぐらいだ。
それだけ我慢したんだから、お仕置きというところだ。
でも俺は知っている。
お前が俺にいじめられるのが心地よくって、そう望んでいることを。
マゾで変態でもいい、俺はそんなお前が好きだ。
俺は愛しい思いを腕に込めて、悠真の身体を抱く。
心配だった熱は上がっていないみたいだけど、まだ身体は行為の名残りで熱いままだ。
俺の腕の中で気持ちよさそうに寝て…時々もぞもぞ動いているのは、無意識だろうか。
「…んあっ。」
なんつー変な声出してんだ。
そして起きた途端に、ウソ寝をしている俺の顔をまじまじと見ている。
おい、あんまり見んなよ…、照れるだろ。
薄っすら開けた瞼の間から見える悠真の表情がコロコロ変わって、面白い。
勿体ないけど、そろそろ声を掛けてやるか。
そんでその後、キスでもさせるかな…。
「変な顔。」
もちろん意地悪な俺だから、最初から本当のことは言わないけれど。
END.