「魔法をかけたい」番外編「神様には秘密」
青城さまがやって来て、厳しい修業の日々がまた始まった。
最初はいい加減で乱暴っぽいから、本当に神様なのか信じられなかったけれど、
魔法の勉強になると、やっぱり神様なんだ、と思わせるぐらい青城さまの魔法は凄い。
もちろん言うまでもなく銀華さまも凄かったんだけど。
「あお、は目が青いから、ぎ、ってのは城って字書くんだよ。城みてぇにでかくなれってことだな。」
そんな風に自分の名前について教えてくれた。
態度だけなら城以上なんだけど、と呟きたい気分だった。
しかもその後も…。
「名付け親?ガキの頃に愛人…愛猫っつーのか?どっかの神様だけどな。」
そ、そんなんでいいのかなぁ…。
やっぱりぼく、この神様についてるの、不安だよぅ…。
紅もきっと同じ…、いや、ぼく以上に毛嫌いっていうか、反抗してるんだよね…。
「チビ太、デカ丸、さっきの魔法の後片付け頼むわ。」
「ぼ、ぼくの名前は桃太ですぅー!」
「紅丸だっ!いい加減覚えろこのアホ城!!」
「はいはい、紅太と桃丸な。んじゃー俺は昼寝でもしてっからよ。」
「もーう!!桃太ですってばぁ!!」
「もう行こうぜ桃、片付けしよう。」
本当にいい加減なんだもんなぁ…。
ぼくと紅の名前、いつになったら覚えてくれるんだろう?
ぼくたちは、後片付けに行こうと、青城さまの前を立ち去ろうとする。
後片付けは苦手だけど、ぼくはちょっと嬉しいんだ。
紅と、二人っきりになれるから。
だっていつも青城さまが近くにいて、滅多になれないんだもん。
こんな風に思うのって、やっぱりいけないのかなぁ…。
「あー、お前ら、二人きりだからって交尾はいかんぞ。」
「ししし、しませんよっ!!」
読まれてるし…。
交尾するとかじゃなくて、二人きりでウキウキしてるってこと。
そんなにぼく、顔に出ちゃってたかなぁ…。
「まったくあいつ、本当に神様なのかよ…。」
「ホントだよねぇ…。名前覚えてくれないし、すぐ交尾がどうって言うし…。…あっ。」
「桃…。」
「えっ、あの、いやそうじゃなくて…!」
ぶつぶつ文句を言いながら、後片付けに取り掛かる。
何気なく言った文句に、交尾っていう言葉が含まれていたことに、自分で気付いてしまった。
しまった、と思った時にはもう遅くて、紅も気付いてしまった。
これじゃあまるでぼくが交尾したいみたいだよ…。
「桃、あの…。」
「べ、紅…、い、今のはそういう意味じゃな…、紅…っ。」
「桃、大好き…。」
「紅…っ、んうっ、紅…ぃ…。」
うわんどうしよう!!
紅ってば興奮しちゃったよー!!
でも…。
こういうちゅー、久し振りかも…。
恋人同士がする、激しくて、でも気持ちのいいちゅー。
どうしようぼく…、紅ともっとくっつきたい…。
「桃…、交尾したい…。」
「あ、あの…ぼく…、ぼく…、ぼ、ぼく…も…。」
「ホント?」
「あの、は、恥ずかしいんだけど…、紅ともっとくっつきたいよ…。」
こんなこと、自分から言うなんて。
紅は呆れてるかなぁって思ったけれど、その逆だった。
嬉しそうに笑った後、ぼくをぎゅっと抱き締めてくれた。
ちゅーしながら紅の手が、ぼくの服の中にするりと入ってきた。
皮膚に触れられる瞬間を、ドキドキしながら待って───…。
「交尾はいかんと言っただろうが。」
「────!!あ、青城さまっ!!」
「…最悪……!!」
「あー…、今のなし。続けていいぞ。見せてみろ、ん?」
「い・や・で・す!!」
「おまえなんかに絶対見せるもんかっ!」
END.
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