「魔法がとけたら…」番外編1「グリート・ザ・ニューイヤー」
『オレあれ食ってみたいんだよな〜。』
大晦日、テレビ番組を見ていたシロは、テーブルに頬杖をついてうっとりとしていた。
『は?モチがか?』
なんだってモチなんか見て涎まで垂らせるんだろう。
まったく変な奴だよな。
でもその表情が俺には堪らなくて、その日のうちに買い物ついでにモチも買って来た。
「お、除夜の鐘。」
「亮平っ、あれは?」
23時を過ぎて、年越し寸前になり、鐘が鳴りだす。
多分モチのことを言ってんだろう、シロの大きな瞳がキラキラ輝いている。
「バッカお前、普通ソバだろ?」
俺はその表情が可笑しくて、笑いながら台所へ向かう。
なんでこいつ、こんなに食いもんに執着すんだろうな。
食ってる時が一番幸せそうだぞ。
その割には全然太らねぇし、今も細すぎんだよ。
まぁいいか、シロの幸せな顔見るのは、俺も嬉しいからな。
俺は年越しソバじゃなくて、モチを用意した。
「おぉ〜、伸びる!」
さっきよりも一層瞳を大きくして、シロは箸でモチを伸ばして遊んでいる。
あ〜あ、ガキじゃねんだから。
「お前なんでモチなんか食いたかったんだ?」
「美幸ちゃんがさ、これ食べる時、
真っ白で柔らかくてオレに似てるね、って言ってたんだ。」
楽しんでいるシロの隣で、俺は疑問を口にした。
むっか…‥。
また美幸かよ。
何の気なしに笑うシロがちょっと憎い。
今はいなくなってしまった人間に嫉妬なんかしても、仕方ねぇし、みっともねぇだけだけど。
「あれ?亮平、なんか怒ってるのか…?」
「別になんでもねぇよ。それより…。」
ムスッとしてる俺の顔を覗き込んで来た。
食べることに一生懸命なシロの口元に近づく。
「ホラ、ついてる。」
口のまわりにあんこを付けていたシロに、キスをして舐め取った。
いっつも食べることに一生懸命で、気付かないんだよな。
バカだなぁ、とか思いつつも、そんなシロが可愛くて、俺は好きだ。
俺も大概バカかもしんねぇけどな。
「ぁ…‥ふぅっ。」
「確かにモチみてぇだな。柔らかい。」
舌先で丁寧に舐めると、シロは反応して甘い声を洩らした。
その白くて柔らかい頬を指で摘んで、唇で噛んだ。
「う…んっ。」
ピクン、と身体が一度跳ねて、触れた頬から、次第に熱を帯びていく。
俺の首に手を回して、抱き付くと、シロからも拙く舌を絡ませて来た。
俺はシロのこの不器用なキスが大好きだ。
キスをしながら、俺はシロの服の中に手を入れて、胸をまさぐる。
ゆっくりと床にシロを押し倒して、服を脱がせて、胸の粒を舌で弄り回すと、すぐに紅く腫れ上がる。
「んっ、亮平…、するの…か?」
「なんで?したくないか?年越し記念に。」
この状態でするのか、なんて聞いてくるのもどうかと思うけど、そんなこと言ってる俺も俺だ。
年越し記念ってなんだよ、アホか俺は。
「し、したい…‥。」
なのにシロの奴、素直に応じるんだもんな。
そんなん言われたらめちゃくちゃ可愛がりたくなるだろうが。
俺は頷く代わりに、もう一度キスをした。
「ん…‥ぁっ。あ…ぁ…!」
腫れたその粒を何度も舌先で転がして、唾液を絡ませて吸い上げる。
シロは大きく口を開けて喘いで、口の端から透明な雫が細く流れ落ちる。
指で押さえようとして叶わなくて、指を口にくわえる形になり、余計俺を煽ることになる。
きっともう…。
想像をしながら、下半身の方へ手を伸ばしてみると、やっぱり形を変えていた。
ジッパーを下ろして楽にしてやると、変化した小さなそれは姿を現わした。
「んふぅ…ん。」
「な、後ろ向いてみろよ。」
先走りを手に絡めながら、軽く扱いて、俺はシロの秘密の場所を探るために、後ろを向かせた。
真っ白で滑らかな二つの丘を目の前にして、また興奮してしまう。
「なんかお前のケツもモチみてぇだな。」
「そ…んなの言う…な…‥んっ?!やだっ、そんなところ舐め…!」
指先で突くと弾力のある肌が跳ね返ってくる。
その窄まりに、俺の舌が滑り込んで、シロの身体は大きく揺れる。
「すっげぇ、やらしい音、聞こえるか?」
「あぁっ!そんなのされたら…我慢できな…っ!」
わざと音をたてて、中をたっぷりと濡らしてやる。
シロの腰がビクビクと動いて、入れられるのを待っているみたいだ。
俺も我慢出来なくて、大きくなったものをそこに挿入した。
「んんっ!あ、ああぁんっ!!」
熱い塊は容易に飲み込まれ、体内で淫猥に蠢いている。
すぐに全身で律動を与えて、絶頂へと掛け昇る。
「ぃや…あぁっ、出る──っ!」
一際高い声を上げて、シロは床にパタパタと白濁を放った。
俺は自分のものを引き抜いて、シロのその丘の上に勢いよく精を吐いた。
「なんか…今日の亮平…ちょっと意地悪かも…っ。」
激しいセックスの余韻が冷めないまま、シロは息を乱しながら、涙を溜めている。
いくらシロでも、さっきの俺の態度には気付いたらしい。
「お前が…。」
「え?」
「お前が今更美幸の話なんかするから悔しくなったんだよっ。悪いか、そんなんで一人モヤモヤしてっ。」
バカだ、俺。
これじゃ駄々っ子だろ。
22の男が何やってんだか。
「ごめん…、でも美幸ちゃんとの思い出は…。」
あぁ、そうだ。
こいつにとっては美幸は特別なんだよな。
それぐらいわかんなくてどうすんだよ。
「いや、俺もごめん。」
「でも、オレ亮平との思い出これからいっぱい作りたいから。だから…。」
シロは俺に擦り寄って、ぎゅうっとしがみ付いた。
時計はちょうど0:00を指している。
「今年も、これからもよろしくな。」
チュッ、と軽く俺の頬にキスをして、一層強くしがみ付いている。
まるで、離さない、って言ってるみたいに。
まぁ、離さねぇけど…。
「俺も、よろしくな。」
俺もまたシロの柔らかな頬にキスを返した。
柔らかくて、熱い頬。
「やっべぇ…なんかまたヤりたくなってきた…。」
「ええぇっ!!」
「お前今よろしくって言ったろ?よろしくしてやるから、な?」
「そういう意味じゃな……っ!」
シロは俺から素早く離れて、逃げようとする。
だけど離すもんか。
俺は、俺たちはこれからも変わらずにこうして年を迎えるんだと、信じている。
離さずに。
離れずに。
A HAPPY NEW YEAR. 2005
END
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