1st stageエンディング+2nd stage予告編「スィート・ホーム 2」




男なら、やっぱり憧れるよな、一戸建てのマイ・ホーム。
隣には愛する妻がいて、足元には子供がいて。
現実的に、そんな金はないし、愛してるけど妻ではなくて、
子供も産まれるわけでもないけど…。
それでもちょっとでもその相手に快適に過ごしてもらいたい。
そう思うのは当然のことだ。
あー…、つまりは何を言いたいかっつぅと。


「え?引っ越し??」

夕メシ時、箸休めしている時だった。
向かいに座るシロにそんな提案をした。
箸を持ったままシロはきょとん、として、なんとも間抜けな顔だけど、
そんな顔も可愛くて、今すぐ抱き締めたくなってしまう。


「もうちょっと広いとこ。嫌か?」
「ううん、やじゃないけど今のここもやじゃない。」
「でも、メシ食うとこと寝る部屋わかれてたほうがよくねぇ?あと猫飼いたいってお前言ってたし。」
「それはそうかも…、あ、うん、飼いたい。」

その間取りのほうがなんだか家庭的かな、とか。
…つーか新婚っぽいけど。
だってこいつ、ケーキ屋の給料入ると全部俺に渡すんだ。
オレ金の使い方わかんないからー、なんて言うから、
使う時だけ渡して…ってなんだかそれも夫婦みたいだな。
この場合シロが旦那っぽいけど。
しかもほとんど使わないし。
そんなだから僅かなシロの給料も結構な生活の支えになっていて、
これはもっと広いとこ住めんだろ、って思ったんだけど。


「あ、でも、そんな金…。」
「大丈夫だ、まだ貯金もあるし、それにお前の金、すげぇ助かってるし。」

俺は見掛けはこんないい加減そうだが、ちゃっかり貯金はあったりする。
なんかのために、なんてハッキリは決めてなかったけど。
じゃなきゃ今更大学入ろうなんて思わねぇし。
シロにはまぁ、ケチって生活してるのしか見せてないけど。


「そっか、オレ役に立ってるのか…。」
「うん、すっげぇ。ありがとう、シロ。」

シロの顔が綻んで、それはもう幸せいっぱいといった感じで、
俺のほうが幸せもんなのに、その笑顔には負けそうだ。


「ほら、メシ粒ついてるぞ。」
「うん…、へへ…。」

シロはいつもどっかに食べ物の欠片をくっつけていて、
それは一般的に見たらだらしないのかもしれない。
でもこいつは元猫で、箸だって最初うまく使えなかった。
それに、一生懸命になって食べるのが、
見てるこっちが 満腹になるような表情が、
もう堪らないぐらい可愛いんだ。
俺はその顔についた米粒を指ですくって自分の口に入れた。
こんな恥ずかしいことも平気でできる、シロと一緒なら。
それはシロが素直で純粋だから、俺もそうなってきたらしい。
カップルとか夫婦が似てくる、ってのはこういうことなんだろうか、
なんてしみじみ思ったりして。





翌日から、空いた時間に部屋探しをした。
都内でもそんなに地価の高くないここで、二部屋、できれば家賃は10万前後。
そんな条件で探し回って、何件か見て、
シロは亮平に任せる、って言ったけど、
お前も一緒に決めてくれ、と とりあえず候補をいくつか見てもらって、
シロも俺も気に入ったある一件に決めた。

そう決まってくると人ってのは早く新しいところに行きたいもんで、
早々に引っ越しまで決めてしまった。
案外長く住んだここには、結構な物が溜まっている。
仕事して、家帰って、暇をみて片付けなんかして。
そんな生活が引っ越しまで続いた。

その間に気付いたことがあった。
シロの物が知らない間に増えていた。
最初はそれこそ裸で、服さえなくて俺が貸して、
それからまぁ、服か身の回りのもんぐらいしか増えてないけど。
それでもここは確実に俺たち二人の家になっていた。
それがこれからもっと増えればいい。

いつだったか、これオレのたからものー、
そう言って靴の箱に何やらしまっていた。
シロに隠れて中を見たことがあった。
隠れて見るも何も、箱なんだから鍵なんかついてるわけでもない。
猫の時してたボロボロのピンクの首輪と、
俺がシロに宛てた当時恥ずかしい代物、と銘打った手紙と。
それを見た時はなんとも言えないような感動に浸ってしまった。




そんな数々の思い出と一緒に、俺とシロは新しい家へと向かった。
歩いてたった10分程度のところだけど。


「あれ…、水島?」
「あ…、藤代さん??」

行った先で、バイト仲間の水島に偶然会った。
俺とシロの入居予定の部屋のすぐ隣で、鍵を開けようとしていた。


「何?お前ここに一人で住んでんのか?贅沢だなー。」
「え…っ、ま、まぁ…ハイ…。」
「あ、俺ら今日から隣、これはシロ、知ってると思うけど。」
「あ…、シロです、こんにちは。」
「こんにちは…、あ、じゃあ俺急ぐんで。」

そそくさと水島は自分の部屋に入ってしまった。
変な奴…普段からあんまりわかんない奴だけど。
ま、いいか…あとでソバ、はねぇから菓子でも持っていくか。


「お邪魔しまーす。」

自分の家なのに、シロはご丁寧にそんなことを言って中に入った。
新しくもないこの場所で、新しい俺たちの生活は始まる。
そこにはいつも俺がいて、シロがいて。
場所が変わっても、いつになっても、そんな光景が見える気がした。


「お前が先に帰ってたらお帰り、俺が先ならただいま、な?」
「うん!」
「一緒の時は…ただいまか?」
「うん!」

それからおはようとおやすみと、行ってらっしゃいと行ってきます。
いただきますにごちそうさまも。
それから、大好き、も愛してる、も。


「亮平、これからもよろしくな。」
「俺もよろしく、シロ。」

そんな愛しい思いを込めて、玄関でキスをした。
俺の一番好きな人と、これからも続く、スィート・ホーム。








HAPPY END.
…and NEXT MAGIC coming soon.







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