「魔法がとけても」番外編2「ハッピー・ホーリー・ディ」




「うぅ…、寒…。」

真冬の朝の冷たい風が、頬に容赦なく突き刺さる。
12月24日。
世間はクリスマス・イブ。
まぁ、俺は相変わらずバイトで、その合間に勉強して、どんちゃん騒ぎなんてしてる場合でもなく。
でも、俺にとってはもう一つの意味ある日だった。


「ただいま〜…。」

まぁ、それももう喜ぶような年頃でもないし。
そんなことを考えながら、いつも通り帰宅すると、シロは台所でガタガタやっていた。


「お前…何やってんだ?」
「あ、おかえり〜、亮平。」
「おかえり、じゃなくて、何やってんだ?!」

その台所の無残な姿に、俺は呆然とした。
俺は見掛けによらず綺麗好きだ。
だから、台所もいつも綺麗で清潔な状態を保っていた…いたのに。


「えーと…、ケーキ…。」
「どこに…ケーキなんかあるんだ?」

シロはしゅん、となって白状したけれど、そんなものは見当たらない。
どこにもねぇぞ…シロ…。


「失敗した…。」

そりゃそうだろうな。
なんか俎板の上に変なもんが乗っているけど、とてもじゃねぇけど食えそうもない。


「なんだ、お前、クリスマスなんかしたかったのか?」

最近まで猫だったクセにイベント好きなのかよ。
つくづく変な奴。


「ケーキ食いてぇなら、買って来てやるから。ほら、どけ、片付けるから。」

俺は粉とクリームまみれになったシロを追いやる。
余計な手間かけさせやがってろ怒った振りをして。


「違う。」
「何が。」
「亮平、誕生日…。」

え…‥。


「あれ、俺、教えたか?」

確か教えてなんかいねぇよな。
俺の記憶の限りでは。


「知ってた。前に亮平、オレが猫だった時、言ってた。」

そういえばそんな独り言言ったような、言わないような…。
まさかこいつと話するなんてこと、ないと思ってたからなぁ。


「コンビニのケーキは不味い、愛がこもってない、って。俺は誕生日がクリスマス・イブだから、
ケーキ食う回数が人より一回少ないから、せめて美味いのが食いたいって。」

そ、そんな恥ずかしいこと言ったのか、俺は。
そんな細かいことまで話してたのか。


「だから、オレ、頑張って作ろうとしたけど…。」
「わかったわかった、お前の愛はもらうから。」

しかもよく憶えてんな。
そんなに俺が好きか。
そんなこと言われたら、たまんねぇよ。
俺もこいつに感化されたのか、こんなクサい台詞普通に言ってるし。


「あと、お前ももらうから。」

クリームの付いたシロの頬を舐める。
甘い、クリーム。
甘い、 頬。


「オレを、もらうって??」
「わかんねぇか?」
「わか…‥んっ、ん。」

体温が上がったシロの頬を撫でて、キスをする。
味見しまくったんだろう、唇まで甘い。


「あ…や、ん…っ。」

舌を絡ませ、唾液を絡ませ、濃厚なキスをして、ついでに頬も舐めまくる。
そのキスに夢中になりながら、シロの服を脱がせていく。


「あ…な、なに…?」
「勿体ねぇから、食う。」

俺は俎板に置かれた生クリームを発見すると、それをシロの身体に垂らした。
掌で塗りたくられた上半身の、胸の突起がもうぷっくりと勃っている。


「これ、何?飾りか?苺?さくらんぼ?可愛いな。」
「あっ、やっ、違…っん…!」
「亮平…っ、オレの、おっぱいなんか、美味しくない…っ、ん…っ!」
「美味いよ?多分、こっちもな。」

ホントにエロ親父じゃねぇかと思うぐらいの台詞を吐きながら、そこを唇で優しく噛むと、シロの身体はピクン、と跳ねた。
片方を手で弄り、片方を舌で転がして愛撫を施す。
胸への刺激で勃って既に先走りが零れているシロの下半身にもクリームを垂らす。


「や…‥っだ…!」
「本当にや、なのか?」

震える脚を支えながら、口に含んだ。
クリームと俺の唾液と先走り液でくちゃぐちゃに濡れたそれを、口の中を何度も出し入れする。


「や…じゃない、けど…っ、出ちゃう…っ。」
「いいよ、出せよ。」
「や、も…、ほんとに…‥っ!…‥んんっ!!」

立っているのも辛いのか、シロは俺の肩と首にしっかり掴まっている。
だんだんとその手に力が入り、シロは俺の口の中に放った。


「お前はこんなところからもクリーム出るんだな。」
「…亮平っ、へ、変態…っ。」

放たれた白濁液を飲み干して、口のまわりを拭った。
シロは顔を真っ赤にして、涙を滲ませて怒る。


「お前が可愛いから、変なことしたくなるんだよ。」

本当に可愛いんだよ。
我ながら、バカだとは思うけど。
別に変態でもいいよ、なんとでも言え。


「亮平、せっくす、するのか…?」
「うん、嫌か?」

どうやらこの先に何をするのかはもうわかるらしい。
最近交尾って言わなくなったし。
俺の教育も順調だ。


「やじゃないけど…ベタベタして気持ち悪い…。」
「よし、風呂だな。」
「待って亮平、待ってって…!」
「そりゃ嫌だな。」

いつもバイトから帰って来ると、シロはお湯を溜めてくれている。
俺は軽過ぎるシロを抱き上げて、風呂場へと行き、自分も服を脱いだ。


「シロ、自分から来てみな?」
「む、無理…っ。」

俺は風呂場の中のマットの上で向かい合わせになって、シロの細い腰を支えた。
涙目になっているシロが首を振る。


「大丈夫、気持ちいいから、な?」
「うん…わかった。」

俺も何いい加減な説明してんだか。
こいつが純粋で何も知らないのをいいことに、変なことばっか教えて。
でも、ごめん。
そこまでしても、多分…。


「───んっ!あ、あ…っ!!」

俺の昂ぶりをシロは簡単に飲み込んだ。
風呂場の中で喘ぐシロの声は残響がかかって、いつになく俺を興奮させる。


「やだ…っ、また…、出る…っ!」
「相変わらず早いな、お前は。いいよ、出せ。」

早くイかせたくて、イった顔が見たくて、俺は激しく揺さ振る。
シロもその動きに応えて、腰から全身が揺れている。


「りょうへ…っ、も、中に…っ、出し…‥っ。」

快感でおかしくなりそうなシロの顔。
開いた口から出た言葉も。
俺までおかしくなる。


「わかってるよ…っ。」
「あ──っ、や、あ、あぁ───…‥っ!!」

一際高い声をあげてシロはまた放って、俺もシロの中に吐き出した。














「……亮平、また、立てない…。」

シロが拗ねたように涙を溜めている。


「もっと鍛えろよ、お前。」

身体を綺麗に洗った後、俺はシロをまた抱き上げてタオルで拭いて、ベッドまで運んだ。


「もうオレ今日は一日寝てる。亮平、どうせバイトだもんな。」

シロはふくれて俺に背を向ける。
その時聞き慣れた電子音が鳴った。


「──あぁ、ハイ。…‥うん、そうか、うん。あぁ、じゃあな。」
「亮平…?」

俺は携帯で話しながら、シロの頭を撫でた。
数十秒で電話を切って、布団に潜り込む。


「シロ、喜べ、今日バイト休みんなった。」
「なんで?」
「なんでだろうな。」
「??」

後ろから、優しく抱き締める。
実はお前といたくて、前に替わってやった奴に今日替われって頼んどいたんだけど。


「変なの。…でもオレ、嬉しい。」
「うん、俺も。今日は一日、一緒に寝てやるから。」
「亮平はただ寝るだけじゃ、済まないんだろ…。」
「よくわかってんじゃねぇか。…でも、そういう俺は好きじゃねぇの?」

シロの身体がビクン、と動いて、恨めしそうに俺を睨む。
本当に俺のことだけはよくわかっているんだ。
そして俺も、わかってる。
お前はどんな俺でも好きだってこと。


「ううん…、好き。」
「だと思った。」

それから、多分お前より、俺の方がベタ惚れで離したくないってことも。
だから、傍にいろよ。 ずっと。




ともあれ、今日は12月24日。
ハッピー(特に下半身が)で、ホーリー(全く逆)な一日。










END.








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