「ラブホリック・ランドリー」その後の番外編「ラブホリック・カウンター」





「俺、恥ずかしいんですけど、実は料理もできないんです…。」

同棲そして初エッチから何日かが過ぎたある日、聖くんが恥ずかしそうに俯きながら告白した。
そんなの俺は全然気にしてないんだけど…つか俺もほとんどできないし。


「じゃあ今までどうしてたの?」
「あっ、それはその…出来たものを…。」

なーんだ、お坊ちゃまの聖くんも普通なところあるんじゃん?
俺みたいにどこかに(主にまぁくんのところ)食べに行ったり、コンビニ弁当とかファーストフードで済ませちゃったりするんだ?
なんだかちょっと安心したような…、しかも恥ずかしそうに言うところがまた!
堪らんなこりゃ、ってもんで。
そう思ってじーんときている俺だったけど…。
やっぱり坊ちゃんの「出来たもの」っていうのは意味が違うと思った。


「親の経営しているレストランに配達してもらっていて…。」
「は?!レストランっ?!」
「はい、実家がレストラン経営をしている会社なんです。」
「へ、へええぇーーー…。」

お、俺、もしかしなくてもすっごいマズいのかな…。
そんないいところの息子さんを美味しく頂いてしまって…。
(頂いたのか頂かれたのか微妙なところだよな)
息子さんの息子さんも食っちゃったぞ俺!
聖こんの息子さん、デカくて入れるの大変だったけど…。
なんて冗談考えてる場合じゃないか!!


「あの、今日も将志さんのところに行きますよね?」
「あーうん、嫌だったら別のところでも…。」
「いえ、将志さんに話もあるんで。」
「そ、そうなんだ…。」

ちょっとそのレストランの料理も食べてみたかったな…。
しかも自宅でってのがまたいいよなぁ。
イチャイチャ食べさせ合ったりして…。
まぁそれはまぁくんのところでもするけど。
もちろんデザートは俺、なんつって!(むしろメインでも可)
きゃっほー、いいないいな!!それやりたいなー。
でもまぁくんに話ってなんだろ??
後から誤解ってわかったけど、1度負けないってライバル宣言してるからなー…。
まぁいいか、それはその時考えようっ!
細かいことは気にしない、これ俺のいいところって言われるもんね♪
そんなわけで、俺と聖くんは、いつものようにまぁくんの店に行くことにした。


「やっほー、あっちゃん。」
「わーかずちゃん!久し振りじゃーん!!」
「店が忙しくてさぁ、夜中には来てたんだけど、あっちゃんと会わなかったもんね。」
「うんうん、夜中は俺、聖くんに夢中で…!」

そこにいたのは、俺のまぁくん以外の唯一の友達とも言える、かずちゃんだった。
かずちゃんも俺と同じ、男しか愛せない人で、まぁくんの店の近くのバーで働いている。
まぁくんの店とは違って、いわゆるそういう人達が集まるようなバーだ。
見た目は綺麗な男って感じで、女の子にも、もちろん男にもモテそうな感じ。


「え、何?あっちゃんの新しい男?何人目?」
「ちょ…、かずちゃんっ、やめてよ聖くんの前で!あ、聖くんっていうの。」
「こ、こんにちは、清原聖純って言います。篤紘さんには大変お世話に…。」
「やだー、聖くんってば俺の方こそ色々夜とかお世話になってるじゃん!」
「なんだか凄く幸せそうだねあっちゃん。」
「そりゃーもう!!」

特にエッチしてる時が一番幸せなのさ!
あの後ろを突かれる快感を知ってるかずちゃんならわかるはず…!
久し振りに会ったし、ここは同士で盛り上がろうじゃないの!!


「おい篤紘うるせぇよ、店でイチャイチャするな。」

テンションが上がりまくったところで、不機嫌そうにまぁくんが店の奥から出てきた。
あぁ、きっとまたお説教だろうなぁ…。


「まぁまぁ、将志ってばそんな怒んなくてもいいのに。」
「和文は黙ってろ。」
「うわ!!本名言わないで!!」
「うるさいオカマ。」
「オカマじゃないって!ゲイ!!」
「似たようなもんだろうが。」

と思ったら、まぁくんとかずちゃんの喧嘩になっちゃったよ…。
まぁくんって若いのに口うるさいじいさんみたいだよね…。
もうちょっと柔軟になれないのかな。
そう言うと誰のせいだ、とか言ってまた怒るし。
このままいったら絶対高血圧で死んじゃうよ。


「あの、将志さん!!お話があるんですけどいいですか!!」
「…は?話??俺に??」
「なになに??あっちゃんの彼氏、将志に喧嘩でも売るの?」
「聖くんっ、まぁくんも!俺のことで喧嘩は…!!」

二人の男に取り合いをされる俺…。
まるで気分は異国のお姫様〜。
いや、俺は聖くん一筋なんだっ、ここは一つ聖くんと一緒になって邪魔されないよう、もっとイチャイチャして見せつけてやる!!


「お、俺に、料理を教えて下さいっ!」
「はぁ?料理?俺が?聖くんに??」
「はいっ、篤紘さんが将志さんの料理好きだし…、俺もこの味に惚れました!!」
「惚れるって…適当に作って出してるだけなんだけど…。」
「ちょ、ちょっと聖くんっ、俺は?俺の取り合いじゃないの?!」
「違います!!(きっぱり)将志さん、お願いします!!」
「バーカ誰がお前なんか狙うかよ。つか俺ホントに適当なんだけど…。」
「いえ、とても美味しいです、ぜひ教えて下さい!」
「ま、まぁいいけど…。」

がーん…、がーん…。
まぁくんの料理に負けた(何に対してかは不明)俺!!
あっくん悲しい!!
なんだか聖くんは目キラキラさせてまぁくんと握手なんかしちゃってるし。
ちぇー、なんだよなんだよ、今夜は飲んじゃうぞー?


「凄いね、あっちゃんの彼氏。今までにないタイプじゃん?」
「そーなんだよね…。」
「いいじゃん、頑張ってよ、今度は長続きするよう祈ってるし。」
「するよ、一生するもんね!」

俺ってそんなにコロコロ男変えると思われてるんだ。
まぁ確かに今まではそうだったかもしれないけどさ。
かずちゃんにも紹介したことだし、益々ラブラブになれるよう頑張るぞ!!


「じゃ、俺もう行くわ、店あるから。」
「ありゃ?もう行っちゃうの?」
「うん、ご飯食べに来ただけだし、将志もうるさいし。」
「俺もそれは思うよ…。んじゃまたね。」

そう言ってかずちゃんは去って行ったけど…。
まだ続く聖くんとまぁくんの会話に、入り切れなくて一人で酒を飲んでいた。
まぁいいか…、とりあえず和解ってことで。

その後、聖くんは、人生初のアルバイトで、この店に入ることにした。
俺も店に行きやすくなるし、練習で作った聖くんの料理も食べれるし、いいことだらけだ。
きっと聖くんは、俺が店に来るのを笑顔でカウンターで待っていてくれるはずだ。
そう思うと、楽しみで仕方がなかった。







END.






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