「薔薇色☆王子様」その後の番外編1〜「薔薇色☆結婚式」








確かに俺は、ロシュを多分好きだ、と言った。
そしてずっと傍にいろ、とも言ったかもしれない。
言ったかもしれないけどよ…‥。


「おい…。」

だからって…。


「おいロシュ!」
「なぁにリゼ。まだ準備終わらないの?」

なんで俺、リーベヌ王国とやらにいるんだ?
いや、それはまだいい。


「準備ってな…。」

俺は深い溜め息をつく。


「早く早くー。国民が集まってるんだよ。」
「なんっで俺と!お前が!結婚式とか挙げてんだよっ!!」

どうやらロシュが父親に頼んで法を変えたのは本当だったらしく、俺はロシュと結婚することになってしまった。


「え…?結婚するんだもん、式挙げるのは当然じゃない。」

するんだもん、じゃなくて。
いや、まぁ、それも大負けに負けて許すとしよう。
でもな…でもな…‥。


「だからって!なんで!俺が、俺がウェディングドレスなんか着なきゃいけねんだよっ!!」

俺は渡されたドレスを握りしめてロシュに向かって怒鳴った。


「だってー、僕は次期国王だよ?リゼはお嫁さんなんだからさぁ。」
「嫁じゃねぇ!」

まったく、なんでこんなこと…。
俺は頭を抱えて椅子に座った。


「リゼってば。そんなに怒ったらせっかくの可愛い顔が台無しだよ?」

誰が怒らせてると思ってんだよ。


「ほら、リゼ…。」
「‥‥…んんっ!」

顎にロシュの指が添えられて、突然キスされた。


「バカっ!何すんだよ!」
「えーいいじゃない。夫婦になるんだし。それにさ、、」

ロシュの胸を突き飛ばす。
なのに離れたはずのロシュが、耳元に近づく。


「夫婦なら、キスだけじゃないでしょ?」

息がかかる程、耳の近くで囁かれ、なぜか体温が上がってしまう。


「…っ。いやだっ!」
「リゼってば、可愛い。照れてる。」

俺の頬とか突くな!
ラブラブカップルじゃねぇんだから。


「可愛くねぇよ!離せ!」
「やぁだ、お兄ちゃん、まだ準備終わってないの?」
「リゼ殿、お急ぎ下さい。」
「那都!ファボルト!」

部屋の大きなドアが重たい音をたてて開けられる。
この薄情な実の妹、那都は、
『ロシュが素敵な人紹介してくれるって言うから。』
なんて言いやがって、通っていた学校も辞めて、住んでいたアパートまで引き払ってここまでついて来たらしい。


「往生際が悪いですよ、リゼ殿。」
「往生際とかの問題じゃねぇだろーがよ…。」

だって俺、男だぜ。
こんなん、着れるかっつーの。


「むむむ…ならは仕方ありませぬな。こうなれは力づくで!」
「な、な、なんだよっ。」

ファボルトの目付きが急に変わり、俺は蛇に睨まれた蛙状態だ。


「ご無礼をお許し下さい。さ、ナツ殿も手伝って下さい!」
「はぁい!」
「やめっ、やめろっ、やめろってば───…‥!!」

俺の叫びは虚しく城に響いた。












ううう…‥。
なんで。 なんでこんな格好。


「では、誓いのキスを。」

そんでなんでこんな大勢の前で男とキスなんか…。


「リゼー。愛してるよ!」
「いやだ…‥!いや…‥っっ!!」

拍手と歓声の中、愛を誓った(?)俺たちはキスしてしまった。


「ありがとう!みんな!」

ロシュが満面の笑顔で手を振る隣で俺は、恥ずかしいやら情けないやらで、俯いたままだった。


「璃瀬ーかぁわいい〜。」
「似合ってるぞー、そのドレス!」
「‥…お前らっ。なんでっ?!」

専門学校の友人達が、俺をひやかしている。


「あ、僕が呼んだの。」
「なんでそういう余計なことするかなお前は…。」

ホント、ついて行けねぇ。


「リゼは幸せだ、って、見せたかったの。」

幸せ、か…‥。
そういや俺、あの大衆の中の一人の男のこと、好きだったんだよな。
そんなこと、忘れてたかも。
ロシュの、お陰で…?
ああぁ、もうっ!! 仕方ねぇなぁ。


「ロシュ。」
「ん?‥…っ!リゼっ?」

ロシュの襟首を掴んで、今度は俺からキスをした。


「ちゃんと幸せにしろよ?」

ロシュは少しびっくりして目を見開いた。


「当然。任せてよ!」

もう、お前には負けた。
俺の人生、くれてやる。
幸せに、するならな。
まぁ、それは俺も自信あるけど…なんて言ったら、こいつのことだ、調子に乗るんだろうな。
今は黙っておくか。


「王子…ご立派です…!」
「ファボルトさん、泣かないで。」
「あなた、ロシュも一人前になりましたね…。」
「さすが我が息子よ…。」

国民が、友人が、そして、大事な家族が見守る中、俺達は新たなる地点に立った。
これからの、俺の…。


「リゼ。楽しみだね、初・夜♪」
「な…‥っ!!」

俺とロシュの、人生…の前に。
どうするんだよ!!
初夜…。
俺、どうなるんだ?!

 





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